じゅーぶんのいち

えていることの十分の一も言葉にできていない。

 

というのは、本当はいろいろと考えているけどそれ全部言葉にしたら角が立つから言葉を選んで口にしている、という意味ではなく。

考えることの全てを言葉にするのは大変だということ。

誰かがぽつりと呟いた言葉が、躓きそうなくらい地面から飛び出た石なら、その地面の下にはどの程度石の残り部分が埋まっているのかなあって、どのくらい広く深く考えて地面から出した言葉なんだろうかって。

日頃はそこまで考えることはないんですけど、何日かに一回は誰かの言葉でそういうこと考えます。嘘です。

でも。尖った石が地面から小さく覗いていたときの、地面の下に広がる宮殿みたいな大きな岩を感じさせるような、そういう言葉に出くわすと、ぞっとして、興奮します。

 

上手い言葉が見つからないときはもどかしくてしょうがなくて、誰が共感するのかわからないような回りくどい比喩とか使って言ったりしますけど、そういうときに辞書食べたくなりますよね。もののけ姫で猩々たちが人間を食べれば人間の力を得られると思ってたみたいに。つまりこういうことです。

 

カステラの下にくっついてる紙が辞書のページだったら良いと思いません?

自発的に辞書を破って食ったらやばいやつだけど、カステラ食べようとしてうっかり辞書のページまで齧っちゃったらそれはもううっかりで済まされるでしょう。

 

うっかり八兵衛は団子を食べ過ぎたらうっちゃり八兵衛になるんですか?

 

閑話休題

普段、言いたいけど我慢して自分の中で抱え込んでる言葉ってあるじゃないですか。誰でもそういうの抱えてると思います。私もありますし、あなたにもありますでしょう。どこで消費することもできずに、蓄積されていくストレスみたいな言葉。言ってやりたい当てがあったりなかったりする言葉。それこそ冒頭の「本当はいろいろと考えているけどそれ全部言葉にしたら角が立つから言葉を選んで口にしている」に近いものですけど。

過去に一度、「言いたいけど言わずに溜め込んでるんだよ」と申告されたことがあって。申し訳ないけど私はそこで「じゃあ全部吐き出して」とは言えませんでした。何も聞きたくなかったというのもありますけど。

そういう言葉って、最後どこにいくんでしょうね。

私はときどき、言ってやりたかった言葉があったことを思い出して、でもまぁ随分と昔の出来事だったりすると今更言ってもなぁとなるじゃないですか。同じような状況になったら、その時は絶対に言ってやるっていうこととかもあるじゃないですか。過ぎてから言えなかったこと思い出すのもままありますけど。

結局、言ってやりたいことがあったことすら忘れてしまうんでしょうけど。

風化するように跡形もなく消えてしまうことに、極めて自然に悲しみを感じてしまいます。

汚くても良いから跡を残しましょうよ。立つ鳥跡を濁してなんぼですよ。とかいいつつ、私は死ぬなら綺麗に身辺整理したい派ですけど。

私はこの世に居なかったことにしておきたいけど、お前らは許さん的なアレです。許さん。

 

あっ! 締めが思いつかない! 尻切れトンボ!

 

おしり。